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てっとうのかいじん

鉄塔の怪人/海底の魔術師

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《鉄塔の怪人/海底の魔術師(てっとうのかいじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 160,770 字 · 322 頁

青空文庫

おうちが広いので、ほかの人たちの声も聞こえません。この勉強部屋は、壮一にいさんとふたりでつかっているのですけれど、そのにいさんも、どこかへ行っていて、賢二君はひとりぼっちなのです。

いっしんに本を読んでいますと、机の上のどこかで、カリカリと、物をひっかくような、かすかな音がしました。へんだなとおもって、そのへんを見まわしましたが、べつに変わったこともありません。しばらくすると、またカリカリと、こんどは、ごく近くから聞こえてきました。賢二君は、なんだか気味がわるくなって、じっと机の上を見ていますと、電気スタンドの台のむこうがわから、黒い小さなものが、はいだしてきました。カブトムシです。

よく見ると、そのカブトムシには、頭のてっぺんから、ニューッと、一本のツノがはえていました。そして、背中に、みょうな白いもようがあります。

賢二君は、そのもようを見て、おもわずゾーッとしました。それは、がい骨の顔にそっくりだったからです。

賢二君は、こわくなって、いすから立ちあがりました。そして、遠くから、机の上を見ていますと、はいだしてきたカブトムシは、一ぴきだけでないことがわかりました。