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てっとうのかいじん

鉄塔の怪人/海底の魔術師

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《鉄塔の怪人/海底の魔術師(てっとうのかいじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 160,770 字 · 322 頁

青空文庫

そして、じっと、くらい海を見おろしているのです。

すると、そのとき、ハヤブサ丸から三十メートルはなれた海面に、パッと光ったものがあります。海の上にガラスのような、まるいものが浮いていて、その中に電灯がついたのです。ついたかとおもうと、すぐ消えてしまいましたが、ひとめで、それがなんであるかが、わかりました。それは、あのおそろしい魚形潜航艇だったのです。

クジラのような黒い船体が、はんぶんほど浮きあがって、その背中に出っぱっている、まるいガラスのようなものの中の電灯が光ったのです。きっと、ハヤブサ丸の水夫へ、あいずをしたのにちがいありません。

それから、じつにおそろしいことが、おこりました。水夫は両手でロープをにぎって、賢吉君をとじこめたタルを、ふなばたから、海面におろしたのです。タルは、うちよせる波の上に、ゆらゆらと浮いています。

水夫は、うわぎをぬいで、シャツ一枚になると、ながいロープの一方のはしを、ふなばたのてすりにとおして、それを持って、じぶんも海面におりていきました。そして立ちおよぎをしながら、てすりにかけたロープを、たぐりよせ、それを、じぶんのからだにまきつけて、しずかにおよぎはじめました。