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てっとうのかいじん
鉄塔の怪人/海底の魔術師
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《鉄塔の怪人/海底の魔術師(てっとうのかいじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。
N3 · 進階 · 新字新假名 · 160,770 字 · 322 頁
そのうち、からだが、むちゃくちゃに、ゆれるだけでなく、なんだか、いきが苦しくなってきました。水もしみこまないほど、しっかり、ふたをしたタルですから、空気が悪くなってきたのです。つまり、酸素がすくなくなって、いきぐるしいのです。このまま、ながくタルの中にいたら、ほんとうに死んでしまうでしょう。
それから、どれほど時間がたったのか、もう、むがむちゅうでした。ふと気がつくと、タルがすこしも動かなくなっていました。いままで、ゆれにゆれていたのが、ピッタリとまったので、耳がジーンとして気味がわるいほど、しずかになりました。すると、またタルがスーッと、もちあげられでもしたように動いて、それから、ゆらゆらとゆれましたが、波に浮いているのと、ちがったかんじでした。
それから、頭の方で、ガン、ガンと、おそろしい音がしたかとおもうと、サーッと、つめたい空気が、流れこんできました。タルのふたが、ひらかれたのです。賢吉君は、その空気をすったとき、じつに、おいしいとおもいました。空気が、こんなにおいしいものだとは、ゆめにも知りませんでした。
だれかが賢吉君をだきあげて、タルの外に出してくれました。