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てっとうのかいじん
鉄塔の怪人/海底の魔術師
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《鉄塔の怪人/海底の魔術師(てっとうのかいじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。
N3 · 進階 · 新字新假名 · 160,770 字 · 322 頁
カブトムシは、シカの姿を見ると、いきなり、おそろしいかっこうで、とびかかりました。まるで大グモが、巣にかかったハエに、とびかかるような、ものすごいいきおいでした。シカは、カブトムシのがんじょうな前足に、おさえつけられて、そこへ、よこだおしになってしまいました。おそろしさに、身うごきもできないで、死んだようになっています。
シカが動かなくなったのを見ると、怪物カブトムシは、ひと足あとにさがって、あの大きなツノを、グッと下にむけて、シカのよこばらめがけて、パッとつきかかっていくのでした。
小林君は、のぞき穴から、目をはなしました。おそろしくて、見ていられなかったのです。目をはなして、あたりを見ると、そこは、もとの夕ぐれの町でした。原っぱがあり、コンクリートべいがあり、のぞきカラクリの箱をのせた車、白ひげのじいさん。ああ、よかった。いまのは、ほんとうのけしきではなかったのだと、胸をなでおろしました。まるで、こわい夢を見たあとのような気持です。
まさか、この箱の中に、あんな山や森があるはずはありません。みんなオモチャのつくりものです。カブトムシもシカも、オモチャで、かんたんな機械じかけで、動いていたのでしょう。