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どうせんかいじへん

銅銭会事変 短編

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《銅銭会事変 短編(どうせんかいじへん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 106,745 字 · 216 頁

青空文庫

「それじゃやっぱりあの時の……」

「ふてえ分けをせびった野郎よ」

「それが今ではお上の目明し?」

「それも改心したからさ。……駿河台の大久保様、彦左衛門のご前に縋り、罪障悉く許されたところから、表向きは古着商売、誠は横目ご用聞き、姓も飛沢を富沢と変え、昔は自分が縛られる身、今は他人を縛るが役目、富沢流取り縄の開祖、富沢甚内とは俺がこと、何んと胆が潰れたか!」

「ふふんそうか、いや面白え。……昔は同じ夜働き、三甚内と謳われた我ら、今は散々バラバラの、目明しもあれは女郎屋もある。これが浮世か誰白浪の俺一人が元のままの泥棒様とは心細いが、それもこうして縛られたからには二度と日の目は見られめえ。すなわち往生観念仏、三甚内はこの世からつまり消えたも同じ事、江戸は今からご安泰だ。アッハッハッハッ」と揺すり上げて勾坂甚内は笑ったが、それは悲壮な笑いであった。

戸外では雪が降り出した。遅い今年の初雪で、一旦さっき止んだのがまたしめやかに降り出したのである。

間もなく浅草鳥越において勾坂甚内は磔刑に処せられ無残の最後をとげたそうであるが、庄司、富沢の二甚内はめでたく天寿を全うし畳の上で往生をとげ、一は吉原の起源を造り一は今日の富沢町の濫觴を作したということである。