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どうせんかいじへん
銅銭会事変 短編
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《銅銭会事変 短編(どうせんかいじへん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 106,745 字 · 216 頁
左内の専門は人相であったが、左伝次の専門は易断であった。百発百中と称されていた。
お色は思わず足を止めた。
「あのお方のお心持ち、ちょっと占って貰おうかしら?」
で門内へはいっていった。すぐ溜り場へ通された。五、六人の人が待っていた。一人一人奥へ呼び込まれた。嬉しそうな顔、悲しそうな顔、いろいろの顔をして戻って来た。やがてお色の番が来た。お色は奥の部屋へ行った。部屋の正面に床の間があった。脇床の違い棚に積まれてあるのは、帙入の古書や巻軸であった。白熊の毛皮が敷いてあった。その上に端然と坐っているのは、三十四、五の人物であった。総髪の裾が両肩の上に、ゆるやかに波を打っていた。その顔色は陶器のようで、ひどく冷たくて蒼白かった。眼の形は鮠のようであった。眼尻が長く切れていた。耳髱へまで届きそうであった。その左の目の瞳に近く、ポッツリ星がはいっていた。それが変に気味悪かった。黒塗りの見台が置いてあった。算木、筮竹が載せてあった。その人物が左伝次であった。茶無地の被布を纏っていた。
お色は何がなしにゾッとした。凄気が逼るような気持ちがした。遠く離れて膝を突いた。