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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 157,440 字 · 313 頁

青空文庫

箱ごと持上げて、いろいろ工夫をしてみましたが、箱の六面は厳重な板を釘づけにしたもので、種も仕掛けもあるはずはなく、振りまわすと箱の中で黄金の環が、ただカラカラと鳴るのです。

「どうだ、その玩具は、気に入ったか」

図太い声が頭の上から、平次をからかい面に響きますが、振り仰いでも人の姿は見えません。

「ここだよ、銭形の親分。ここだよ」

今度は確かに見つけました。平次のいる五階の上、塔の扉の上部の鏡板の外れたところから覗いて見ると、一番上の屋根の下のヤスガタに、蝙蝠の様にへばりついてひょっとこの面を冠った一人の男が、人を馬鹿にしたような声を掛けているのでした。

「野郎ッ」

平次は飛び出そうとしましたが、いけません。塔の扉はどんな仕掛けがあったものか、外から厳重に閂を差して一寸も動かないのです。

「ムダだよ、銭形の親分、その扉は打ち壊さなきゃ外へ出られないよ。扉を壊せば天王寺の役僧にしかられるだろう。フ、フ、フ、銭形の親分でも、寺社の役人には歯が立つまいて」

「――」

「それより、おれの話を聴くが宜い。おとなしく聴くだけの値打ちはあるよ。これだけの手数をして、銭形の親分を五重の塔の上におびき寄せたのは、水入らずに話をしたいためだ。