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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 157,440 字 · 313 頁
「畜生、勝手にしやがれ」
大舌打ちを一つ、紙片を橋の上へ捨てた上、足でポンとけって、そのまま急ぎ足に湯島横町へ――そのあとで饅頭笠の小僧は、紙片を拾って、何処ともなく飛んで行ったことは言う迄もありません。
紙片は相手に渡して宜しいと親分の平次に許されたものです。この上八五郎の勤めは、お静を無事に救い出して、親分平次の前へつれて帰れば済むのです。
八五郎は橋を渡ると、小僧との約束も忘れて、もうかけ出しておりました。
「お静姐さん」
天水桶の蔭へ飛び付いた時は、後ろ向きの女がたった一人、八五郎の大きな声に驚いてハッと振り返りましたが、
「ま、八五郎親分」
大きい眼を見張ってニッコリしたのは、お静ほどは綺麗でなかったとしても、お静よりはぐっと若くて可愛らしい、あの樽拾いの元吉の姉、佐久間町のお雪ではありませんか。
「お前は、お前は?」
八五郎は暫らくは開いた口も塞がりません。
「どうなすって? 八五郎親分」
「お前こそどうしたんだ。それはお前、昨夜行方不明になった銭形の親分のところの、お静姐さんの着物じゃないか」
「これが、あの、お静姐さんの着物ですって、まア、まア」