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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 157,440 字 · 313 頁

青空文庫

お前は何んかうまいことをこさえて、その人を家へ引入れる気だろうが、そうは行かないよ」

「弱ったなア、叔母さん」

八五郎は全く手こずりました、こればかりは十手でも捕縄でもいけません。

叔母のお浅が、関所を据えて、お銀を通さなかったのも無理はありません。

手燭をかかげて、闇の中に浮かしたこの女の妖しさは、全く抜群だったのです。多い毛からしづくが垂れそうで、ほの暗い顔に、青い眉、紅い唇の対照は、何んという魅力でしょう。細っそりした肩から流れる紫陽花色の単衣も、物の精のような幽玄な美しさです。

「さア、さっさと帰っておくれ。同じ伴れ込むんなら、せめて眉をそらない、歯の白いのにしておくれ。本当に人を馬鹿にしているよ」

明らかに人妻と見られる女を伴れ込んだのが、八五郎一代の不覚だったのでしょう。意地っ張りと貧乏の闘いに、半生の辛酸をなめて来た叔母のお浅は、可愛いい一人の甥が、眉毛をそり落した美女を、夜中に伴れ込んで来たのを――よしやどんな弁解を用意したにしても、そのまま享け容れるほど寛大になりきれなかったのです。

「叔母さん、そんなんじゃありません。本当に銭形の親分が――」