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かぎからぬけだしたおんな
鍵から抜け出した女
海野 十三
線上閱讀海野 十三《鍵から抜け出した女(かぎからぬけだしたおんな)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 21,188 字 · 43 頁
そして続いてその軒下を出ると、スルリと裏通へ滑りこんだ。
裏通は島の人たちで異様な賑いを呈していた。しかしあっちで一団、こっちで一団と、彼等はなにかヒソヒソと話しあっていた。それは脱走者である僕に懸けられた莫大な賞金のことに違いなかった。
住民の中には、僕の方を胡散くさそうに、ふりかえる者もあった。しかし僕は逸早く病院の寝衣を脱ぎすて、学生服に向う鉢巻という扮装になっていたので、そんなに深く咎められずにすんだ。
「蓮照寺へ――」
僕は前後左右きびしく警戒しながら、おおよその見当をつけて、南の方へズンズン歩いていった。
隆魔山――という、島で有名な山のことは僕は一度来て知っていた。見覚えのある蓮照寺の垣根の前にヒョックリ出たときは、夢のように嬉しかった。
「裏門は何処だろう?」
尼寺の垣根は、まるで小型の万里の長城のように、どこまでも続いていた。どこが裏門やら探すのに骨が折れたが、とにかく門が見つかったものだから、そこへ飛びこんだ。
尼寺の庭は文字どおり闇黒だった。どこに鐘楼があるのやら、径があるのやら、見当がつかなかった。――僕は棒切れを一本拾って、それを振りまわしながら、寺院の庭を歩きまわった。