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うし
鎧櫃の血
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《鎧櫃の血(うし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 48,702 字 · 99 頁
なんだか忌々しいような気になったので、彼はそこらの小石をひろって投げつけると、鶏は羽摶きをして姿を消した。
夢は唯それだけである。眼がさめると、連れの三人はもう帰ったというので、治三郎も早々に帰った。山へ帰れば一種の籠城である。八百屋お七の夢などを思い出している暇はなかった。
十五日はいよいよ寄手を引寄せて戦うことになった。彰義隊の敗れたその日の夕七つ頃(午後四時)に、治三郎は根津から三河島の方角へ落ちて行った。三、四人の味方には途中ではぐれてしまって、彼ひとりが雨のなかを湿れて走った。しかも方角をどう取違えたか、彼は千住に出た。千住の大橋は官軍が固めている。よんどころなく引っ返して箕輪田圃の方へ迷って行った。
二
蓮田を前にして、一軒の藁葺屋根が見えたので、治三郎はともかくもそこへ駈け込んだ。彼は飢えて疲れて、もう歩かれなかったのである。ここは相当の農家であるらしかったが、きょうの戦いにおどろかされて雨戸を厳重に閉め切っていた。
治三郎は雨戸を叩いたが、容易に明けなかった。続いて叩いているうちに、四十前後の男が横手の竹窓を細目にあけた。