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くにさだえがく
鏡花短篇集 川村二郎編
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《鏡花短篇集 川村二郎編(くにさだえがく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 19,644 字 · 40 頁
あと二夜ばかりは、空模様を見て親たちが出さなかった。
さて晴れれば晴れるものかな。磨出した良い月夜に、駒の手綱を切放されたように飛出して行った時は、もうデロレンの高座は、消えたか、と跡もなく、後幕一重引いた、あたりの土塀の破目へ、白々と月が射した。
茫となって、辻に立って、前夜の雨を怨めしく、空を仰ぐ、と皎々として澄渡って、銀河一帯、近い山の端から玉の橋を町家の屋根へ投げ懸ける。その上へ、真白な形で、瑠璃色の透くのに薄い黄金の輪郭した、さげ結びの帯の見える、うしろ向きで、雲のような女の姿が、すっと立って、するすると月の前を歩行いて消えた。……織次は、かつ思いかつ歩行いて、丁どその辻へ来た。
四
湯屋は郵便局の方へ背後になった。
辻の、この辺で、月の中空に雲を渡る婦の幻を見たと思う、屋根の上から、城の大手の森をかけて、一面にどんよりと曇った中に、一筋真白な雲の靡くのは、やがて銀河になる時節も近い。……視むれば、幼い時のその光景を目前に見るようでもあるし、また夢らしくもあれば、前世が兎であった時、木賊の中から、ひょいと覗いた景色かも分らぬ。