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しっぽうのはしら
鏡花短編集
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《鏡花短編集(しっぽうのはしら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 15,632 字 · 32 頁
蜀紅の錦と言う、天蓋も広くかかって、真黒き御髪の宝釵の玉一つをも遮らない、御面影の妙なること、御目ざしの美しさ、……申さんは恐多い。ただ、西の方遥に、山城国、浄瑠璃寺、吉祥天のお写真に似させ給う。白理、優婉、明麗なる、お十八、九ばかりの、略人だけの坐像である。
ト手をついて対したが、見上ぐる瞳に、御頬のあたり、幽に、いまにも莞爾と遊ばしそうで、まざまざとは拝めない。
私は、端坐して、いにしえの、通夜と言う事の意味を確に知った。
このままに二時いたら、微妙な、御声が、あの、お口許の微笑から。――
さて壇を退きざまに、僧のとざす扉につれて、かしこくもおんなごりさえ惜まれまいらすようで、涙ぐましくまた額を仰いだ。御堂そのまま、私は碧瑠璃の牡丹花の裡に入って、また牡丹花の裡から出たようであった。
花の影が、大な蝶のように草に映した。
月ある、明なる時、花の朧なる夕、天女が、この縁側に、ちょっと端居の腰を掛けていたまうと、経蔵から、侍士、童子、払子、錫杖を左右に、赤い獅子に騎して、文珠師利が、悠然と、草をのりながら、
「今晩は――姫君、いかが。」
などと、お話がありそうである。