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ながさきのかね
長崎の鐘
永井 隆
線上閱讀永井 隆《長崎の鐘(ながさきのかね)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 65,109 字 · 131 頁
一人でいちばんたくさんあったのは百十傷であった。傷を洗い、異物を取り除き、整形縫合し、薬をつけて、繃帯を巻き上げるまでには、一人の患者にずいぶん時間をとられる。熱傷も無残な姿だ。皮膚が大きくべろりと剥げて、赤い皮下組織が痛々しくあらわれている。多くは顔と胸と腕とである。顔などは化け物のように腫れ上がり、ものいうのも難しい。傷に油を塗っているのは救護演習で教えられたとおりで経過もよいが、馬鈴薯をすって塗ったのや、南瓜を張ったのや、粘土を被せたのも多くてむごたらしい。傷を消毒して、六枚板の鉱泉で温罨法を命じた。一軒を済ませて畑路伝いに隣へ行けば、もう蚊帳を吊っているのが見えて、ここにも怪我人がいるわいと、勇み立つ。
夜十時、犬継地区を全部診て回り、蝮をいましめながら山路を藤ノ尾の本部へ帰る。草はすでに露にしめり、ちんちろりんが渓を隔てて鳴き合っている。北斗はいつしか傾き、三ツ山の上に大きく蠍星が伸び上がっている。昨夜焼け跡の防空壕から仰いだアンタレスは不吉な赤さで搏動していたが、今夜この平静な渓間から望めば、何か親しみたい気を起こさせる。だれもが黙って歩いている。