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あなんとじゅじゅつしのむすめ

阿難と呪術師の娘

岡本 かの子

線上閱讀岡本 かの子《阿難と呪術師の娘(あなんとじゅじゅつしのむすめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 28,425 字 · 58 頁

青空文庫

師の世尊がお呼びであるぞ。

(目※(「特のへん+廴+聿」、第3水準1-87-71)連の声が聞ゆると同時に、阿難と娘を縛めたる毛綱おのずと断れ落つ。阿難、夢の醒めたる様子にてよろよろ立上る。)

阿難 ――おお、あれは目連どのの声だ。わたしは救われる。(声の方を仰ぎ)目連どの、阿難は茲に居る。

娘 ――只今の頼母しきお言葉に引き換え、そのお気色はどうした事で御座います。阿難さま、あなたはお一人でお逃げ遊ばす気におなりなされましたか。

(娘、阿難に縋り付く。阿難、娘を振り捨てるとにはあらねど、心は既に彼方に在る様子。)

阿難 ――世尊のみ弟子の中に在って神通第一と呼ばれたる目連どの。わたしは今、危い淵の岸に在る。早くおん身の神通力によって救って下さい。救って下さい。(阿難、無我夢中に、空へ駆昇らん擬勢を示す。娘、いよいよ執念く取り縋る。)

娘 ――阿難さま。あなたの行く処へわたくしも行きます。どうぞ何処へなり、一緒にお連れなすって下さいまし。

(二人はもがく。二人の前に老女立ちふさがり、空を睨み乍ら。)

老女 ――呪いは意志なのだ。正邪の判断を寄せ付けぬ石火矢なのだ。