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かげろうざ

陽炎座

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《陽炎座(かげろうざ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 33,381 字 · 67 頁

青空文庫

……が、なぜか、物の本の古びた表面へ、――来れや、来れ……と仮名でかきちらす形がある。

見つつ松崎が思うまで、来れや、来れ……と言った差配の言葉は、怪しいまで陰に響いて、幕の膨らんだにつけても、誰か、大人が居て、蔭で声を助けたらしく聞えたのであった。

見物の児等は、神妙に黙って控えた。

頬被のずんぐり者は、腕を組んで立ったなり、こくりこくりと居眠る……

饂飩屋が、ぼやんとした顔を上げた。さては、差置いた荷のかわりの行燈も、草紙の絵ではない。

蟻は隠れたのである。

九

「狐か、狸か、今のは何じゃい、どえらい目に逢わせくさった。」

と饂飩屋は坂塀はずれに、空屋の大屋根から空を仰いで、茫然する。

美しい女と若い紳士の、並んで立った姿が動いて、両方木賃宿の羽目板の方を見向いたのを、――無台が寂しくなったため、もう帰るのであろうと見れば、さにあらず。

そこへ小さな縁台を据えて、二人の中に、ちょんぼりとした円髷を俯向けに、揉手でお叩頭をする古女房が一人居た。

「さあ、どうぞ、旦那様、奥様、これへお掛け遊ばして、いえ、もう汚いのでございますが、お立ちなすっていらっしゃいますより、ちっとは増でございます。