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あめあがる
雨あがる
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《雨あがる(あめあがる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 21,794 字 · 43 頁
久しく飢えていたところで、みんな忽ちに酔い、ぼろ三味線が持ち出され、唄が始まり、踊りだす者も出て来た。
「まるで夢みてえだなあ」鏡研ぎの武平という男がつくづくと云った、「――こんな事が年に一遍、いや三年に一遍でもいい、こういう楽しみがあるとわかっていたら、たいてえな苦労はがまんしていけるんだがなあ」
そして溜息をつくのが、がやがや騒ぎのなかからぽつんと聞えた。伊兵衛はちょっと眼をつむり、それからどこかを刺されでもしたように、ぎゅっと眉をしかめながら酒を呷った。
こういうところへあの女が帰って来た。いつもは夜半過ぎになるのに、客が取れなかったものかどうか、蒼ざめたような尖った顔で土間へ入って来て、このありさまを見るとあっけにとられ、濡れた髪を拭こうとした手をそのまま、棒立ちになった。これを初めにみつけたのは源さんの女房である。子供がたびたび飴玉などを貰うので、なかでは女と親しくしていたが、そのときは酔って、昼間の出来事をつい忘れたとみえ、「おやおろくさんの姐さんお帰んなさい、いま三沢さんの旦那のおふるまいでこのとおりなんですよ、さあ姐さんも早くあがって」