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ゆきたたき

雪たたき

幸田 露伴

線上閱讀幸田 露伴《雪たたき(ゆきたたき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 28,132 字 · 56 頁

青空文庫

中々食えぬ老人には相違無いが、此時の顔つきには福々しさも図々しさも無くなって、ただ真面目ばかりが充ち溢れていた。ところが、それに負けるような主人では無かった。

「いやでござる。」

と言下に撥ねかえした。にッたりとはして居なかった、苦りかえっていた。

「おいやと御思いではござりましょうが、何卒御思い返し下されまして、……何卒、何卒、私娘の生命にかかることでござりまする。」

「…………」

「あの生先長いものが、酷らしいことにもなりまするのでござりまするから。」

「…………」

「何としても、私、このままに見ては居れませぬ。仏とも神とも仰ぎたてまつります。何卒、何卒、御あわれみをもちまして。」

「…………」

「如何様の事でも致しまする。あれさえ御返し下さりょうならば、如何様の事を仰せられましょうと、必ず仰のままに致しまする。何卒、何となりと仰せられて下さりませ。何卒何卒。」

「…………」

「斯程に御願い申上げても、よしあし共に仰せられぬは、お情無い。私共を何となれとの御思召か、又彼品を何となさりょう御思召か。何の御役に立ちましょうものでもござりますまいに。」

「御身等を、何となれとも、それがしは思っておらぬ。