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くものわくころ

雲のわくころ

小川 未明

線上閱讀小川 未明《雲のわくころ(くものわくころ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 5,198 字 · 11 頁

青空文庫

勇ちゃんは、こんどの休みに、私といっしょにいってみないか。」と、おじさんが、さそったのでした。

「山へいくんですか。」と、かれは、胸をおどらせながら、おじさんの顔を見ましたが、すぐには、決しかねて、返事ができなかったのでした。そのわけは、自分が、まだ遠いところへ、いった経験がなかったからです。

「なに、たいして、歩かなくても、すぐ山や谷のあるそばまで、いけるのだよ。バスと電車に乗りさえすれば、朝早く出かければ、らくに晩がたまでに、帰ってこられるのだ。」と、おじさんは、わらいながらいいました。そして、

「毎年、いまごろになると、ちょっとでも、山へいくか、また、釣りざおをさげて、どこか遠くの川に出かけなければ、気がすまないのだよ。」と、おじさんは、いうのでした。

「おじさん、ぼくも、大きくなったら、どこか、知らない高い山や、深い谷のあるところへ、いってみたいと思います。」と、勇吉は、冒険にたいする勇猛心と、かぎりない自然の美にたいして、あこがれながらいいました。

「それが、昔なら、歩かなければ、どこへも、いけなかったのが、いまは便利になって、たいていのところへは、乗り物で、そばまでいけるし、飛行機に乗れば、外国でも、土をふまずに、海や山をこして、飛んでいくことができるのだから。