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でんきぶろのかいしじけん

電気風呂の怪死事件

海野 十三

線上閱讀海野 十三《電気風呂の怪死事件(でんきぶろのかいしじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 16,788 字 · 34 頁

青空文庫

熱過ぎる位の湯加減である。頤の辺まで湯に漬りながら、下歯をガクガクと震わせながら、しかも彼は身動きすることを怖れて、数瞬じいっと耐えていた。と、唐突、

「熱ッ」と叫びながら、遽かに飛び出したのはその学生らしい男であった。忽ちに、湯槽の中は激しい波が生じて、熱湯が無遠慮に陽吉の背筋に襲いかかった。ブルブルブルと一竦みに飛び上った彼は、湯槽の縁に手をかけて出ようとした瞬間、

「吁ッ!」

という叫びと共に、彼の体は再び湯の中に転倒してしまった。全身に数千本の針を突き立てられたような刺戟、それは恰も、胃袋の辺に大穴が明いて、心臓へグザッと突入したような思いだった。指先は怪魚に喰いつかれたような激痛を覚えた。

「た、救けて! で、電気、電気だ。感電だ!」

ザアッと湯の波に抗って、朱塗の仁王の如く物凄く突っ立った陽吉が、声を限りに絶叫したとき、浴客ははじめて総立ちになって振返った。由蔵は垢摺りを持ったまま呆然と案山子のように突っ立っている。二人の職人風の伴は、それと見るより呼応して湯槽の傍へ駆けつけて来た。

「おい。兄弟、手を、手を貸した」

「よし来た!」

向う見ずに、今にも湯槽へ飛び込もうとするのを見て、例の学生風の男が大声で制した。