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でんしゃとふろ
電車と風呂
寺田 寅彦
線上閱讀寺田 寅彦《電車と風呂(でんしゃとふろ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,851 字 · 10 頁
と論じている。これを読んでなるほどと感心した。
しかしまだどうもこの説には充分に腑に落ちないところがある。もし東京にあの風が吹かなかったら、もし東京の街の泥と塵がなかったら、そして電車の数を増すか、あるいはいっその事に全部無くしてしまったら、それだけでも東京市民の顔は幾分か柔らかく快いものになりはしまいかと思われる。
こう考える理由が一つある。
東京市民の顔の緊張がやや弛んで見える場所がある、それは外でもない風呂屋である。日本に特有なこの有難い公共設備の入口の暖簾を潜って中へはいると、先ず番台からかけられる声からが既によほどゆるやかなものである。そして柔らかく温かに湿った湯気の中に動いている人の顔にも、鏡の前に裸で立ちはだかって頬を膨らしてみたり腹を撫でてみたりしている人の顔にも、湯槽の水面に浮んでいるデモクラチックな顔にも、美醜老若の別なく、一様に淡く寛舒の表情が浮んでいる。
この有難い設備と習慣とがなかったら東京市民の顔は今頃どんなものに変化しているだろう。
銭湯の湯船の中で見る顔には帝国主義もなければ社会主義もない。
もし東京市民が申し合せをして私宅の風呂をことごとく撤廃し、大臣でも職工でも皆同じ大浴場の湯気にうだるようにしたら、存外六ヶしい世の中の色々の大問題がヤスヤス解決される端緒にもなりはし