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ろはんせんせいとかがく

露伴先生と科学

中谷 宇吉郎

線上閱讀中谷 宇吉郎《露伴先生と科学(ろはんせんせいとかがく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 7,198 字 · 15 頁

青空文庫

三つばかりの論文が既に発表され、そのつぎの研究が大体出来上がった時には、先生は最後の病床についておられた。もっともあの年の秋の理研の講演会で、その論文の代読をした頃は、まだあれが最後の病床だとは思っていなかった。そういうことも一つの機縁となって、墨と硯とに対する興味がかなり強くなっていた時代である。

墨や硯のことになると、これは露伴先生に伺うには、こっちの知識があまりに少なすぎた。第一漢字をあまり知らないので、先生の話の単語がまずつかめない。いちいちどういう字ですかときくわけにも行かないので、惜しいながらに聞き流していた。歴史的のことはほとんど忘れたが、墨の性質についてはいろいろなことを教わった。昔の墨は硬墨であったが、現在のは軟墨であること、それは膠のちがいによるもので、獣膠は硬いが魚膠は軟いからである。獣膠でも特に角や嘴から採った膠が硬い。古墨のごく硬いものは、水中に放置してもほとんど変らず、墨を磨り終ったところでその磨り口の縁で紙が切れるくらいといわれているそうである。日本で墨の膠のことを重視したのは、鈴木棋仙であった。もっとも現在の日本の墨はほとんど全部魚膠で、問題にならないらしい。