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あおべかものがたり

青べか物語

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《青べか物語(あおべかものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 頁

青空文庫

盤は古道具屋から買ったものだが、ちゃんと脚がついているし、駒もいちおう黄楊材で、肉が薄く、盤へ置くときには冷たそうないい音がした。

「ゆんべはいしが先手だったっけ」と彼は安息のためいきをつきながら云った、「じゃあひとつ、今夜はおらが先手といくか」

そして、二手か三手指したとき、戸口に人のおとずれる声がした。人が訪ねて来ることなどはごく稀なので、初めは隣りの秋葉エンジの家かと思っていたが、自分の名を呼ばれたので、彼は返辞をし、いま指した七八銀の手をよく確認してから、立ちあがった。格子をあけて、狭い土間に立っていたのは、臼田屋のおさいであった。彼女はよそゆきの着物に、厚化粧をしてい、洋食部の女給たちのように、安香水を強く匂わせていた。

「あたしあやまりに来たのよ」おさいは媚びた笑いをみせながら云った、「ちょっとあがってもよくって」

彼は微笑したまま立っていた。あがれとも云わないし、あがってもいいような顔つきではなかった。おさいは片手で髪を撫でた。

「でもあたし、いそぐから」と彼女はすぐに云い直した、「今夜はここでお詫びだけ云っとくことにするわ、いいでしょ」