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あおべかものがたり

青べか物語

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《青べか物語(あおべかものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 頁

青空文庫

「あたいははあんと思ったよ、きたなって思っちゃったよ、ははあんきたなってさ、わかるでしょ先生」と栄子が云った。

私が答えると、栄子は鼻で笑った。

「わかんないかな、あたいの躯だよ」と栄子は動物的に張りきった胸を叩いてみせた、「そんなこと云えばあたいがくしゃっとまいってさ、くらがえしてでも三〇〇ぐらいのお金は拵えるだろう、って見当つけて来たんさ、子供騙しだよまったく」

そのときは栄子自身も不景気で、にっちもさっちもいかない状態だった。雑貨屋や銭湯にまで借りが溜まっていたから、そのわけを話していっしょに死にましょうと答えた。彼女たちのあいだでは「心中」という言葉は愛情の極致を示すものであり、誰でも一生にいちどはやってみたいとあこがれるものだ、と栄子は云った。――岸がんは思い詰めたような顔をしたそうで、それなら催眠薬の強いのを持って来るから、それをのんで死ぬことにしよう、あさっての晩に来るが心変りをしないように、と云った。栄子は催眠薬なら自分がドイツ製のを持っている、あんたはあんたの分だけ持ってくればいい、と答えた。そんな物をどうして持っているんだ。まえに自分の友達が自殺したとき、残りを隠して置いたのだ。