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あおべかものがたり

青べか物語

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《青べか物語(あおべかものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 頁

青空文庫

明くる日の午後おそく、土堤のほうで子供たちの騒ぎだす声を、私は聞いた。もとより予期していたことで、私は机に向ったまま、その騒ぎを聞きながら、いまになにか反応があるだろう、誰かがやって来るだろう、とひそかにほくそ笑んでいた。子供たちの騒ぎは第一回のときよりも盛大であり、石を投げつける音も数多く、かつ活気に満ちたものであった。私は待ったが、誰もやっては来なかった。長さえも来ないまま騒ぎが続き、やがて、ずいぶんときが経ってから、子供たちは去っていった。

「おかしいな」と私は呟いた、「気がつかなかったのかな」

もはや悪童どもがいないということを慥かめてから、私は用心ぶかく家を出ていった。

青べかは洗い場の杭につながれていた。私は踏段をおりてゆき、跼んで、まず彼女のふなばたをしらべた。昨夜、私が書いた「ロジナンテ」という字は、傷だらけではあるが残っていた。投石は思ったより華やかだったらしく、ペンキはさらに剥げ、ふなべりは幾カ所も欠けていた。

「この字をなんとも思わないのかな」と私は白いペンキの文字を見ながら呟いた、「かれらには好奇心も懐疑心もないんだな」

私の期待は外れた。