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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
線上閱讀織田 作之助《青春の逆説(せいしゅんのぎゃくせつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,593 字 · 325 頁
ある戦国時代の城主の血をかすかに引いている金助の立派な家柄が、それでわかるのだったが、お君にははじめて見る品だった。金助から左様な家柄に就てついぞ一言もきかされたこともなく、むろん軽部も知らず、軽部がそれを知らずに死んだのは、彼の不幸の一つだった。お君に知らさなかった金助も金助だが、お君もまたお君で、
「折角でっけど、そんなもん私には要用おまへん」と、質屋の申出を断り、その後家柄のことも忘れてしまった。利子の期限云々とむろん慾に掛って執拗にすすめられたが、お君は、ただ気の毒そうに、
「私にはどうでも良えことだっさかい。それになんだんねん……」電車会社の慰藉金はなぜか百円そこそこの零細な金一封で、その大半は暇をとることになった見習弟子に呉れてやる肚だった。そんなお君に山口の田舎から来た親戚の者は呆れかえって、葬式、骨揚げと二日の務めを済ませるとさっさとひきあげてしまい、家の中ががらんとしてしまった夜、ふと眼をさまして、
「誰?」と、暗闇に声を掛けたが、答えず、思わぬ大金をもらって気が変になったのか、こともあろうにそれは見習弟子だと、やがて判った。しかし、あくる日になると、見習弟子は不思議なくらいしょげ返ってお君の視線を避けて、男らしくなく、むしろ哀れだったが、夕方国元から兄と称する男が引取りに来ると彼はほッとし