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せいしゅんのぎゃくせつ

青春の逆説

織田 作之助

線上閱讀織田 作之助《青春の逆説(せいしゅんのぎゃくせつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,593 字 · 325 頁

青空文庫

「私でっか。私は如何でもよろしおま」

しかし、流石にお君は、豹一が小学校を卒業したら中学校へやらせてくれと条件をつけた。これは吝嗇漢の安二郎にはちくちく胸痛む条件だったが、けれどもお君の肩は余りにも柔かそうにむっちり肉づいていた。

安二郎には子供がなく、さきの女房を死なせると、直ぐ女中を雇って炊事をやらせるほか、女房の代りも時にはさせていたが、お君が来ると、途端に女中を追い出し、こんどはお君が女中の代りとなった。

「人間は節約せんことには、あかんネやぜ、よう聴いときや」と口癖して、一銭のお金もお君の自由に任せず、毎日の市場行きには十銭、二十銭と端金を渡し、帰ると、釣銭を出させた。ときには自分で市場へ行き、安鰯を六匹ほど買うて来て、自分は四匹、あとはお君と豹一に一匹ずつ与えた。いつか集金に行って乱暴をされたことがあって以来、山谷という四十男を雇って集金に廻らせていたが、むろん山谷は手弁当で、安二郎のところで昼食すら出すことはなかった。山谷は破戒僧面をして、ひとり身だった。ある日、豹一に淫らな表情で、お君と安二郎のことに就て、きくにたえぬ話を言って聞かせた。