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せいしゅんのぎゃくせつ

青春の逆説

織田 作之助

線上閱讀織田 作之助《青春の逆説(せいしゅんのぎゃくせつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,593 字 · 325 頁

青空文庫

「二十歳です」豹一は噛みつくように言った。

「じゃ、僕と三十ちがいだ。僕は五十だ」

豹一はぷっと吹き出した。眼鏡を外した土門はどう見ても三十二、三にしか見えなかった。しかし、豹一の笑はすぐ止った。その時、一人の男が禿げあがった頭に雪をかぶって、飛び込んで来たが、その顔を見るなり、(文芸部の北山という男だな)と直感したからである。豹一は咄嗟に緊張した。この男が銀子に手をつけたのか、ともう笑えなかった。白い眼でじっとにらみつけた。が、男はそんな豹一には目もくれず土門と向いあった豹一の傍に腰を掛けると「違うぞ。誤解だ、誤解だ!」と、言った。土門はそれには答えず、

「おれがここにいるとよくわかったな」

「どうせ近くだとにらんだわい」

「電話のおれの声の大きさでわかったというんだろう。そこで、もっと大きな声をききに来たってわけか」土門はそう言って、でかい声で笑った。

豹一はそうして二人が笑っているありさまを不真面目なものに思い、じっと息をこらしていた。二人が笑うぶんだけ、豹一は怖い顔をしていたのである。土門はやがて笑い止むと、

「誤解とぬかしたな」と、言った。

「誤解だ。