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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
線上閱讀織田 作之助《青春の逆説(せいしゅんのぎゃくせつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,593 字 · 325 頁
質屋への使いに行ってくれる。
その質屋への使いだけは勘弁してくれと、豹一は頼みたかった。が、そのためには安二郎に頭を下げる必要がある。それがいやだった。豹一はむっとした顔で、渋々質屋へ行った。丁度運悪く紀代子のことですっかり悄気てしまい、自尊心の坐りどころを失っていた時だった。道を歩いていても、すれ違う人のすべてが自分を嘲笑しているように思えた。質屋の暖簾が見えるところまで来ると誰か見てへんやろかと、もう警戒の眼を光らせた。
(お前の母親はお前の学資を苦面するために、この暖簾をくぐったのだぞ)そう自分に言い聴かせて、はじめて暖簾をくぐることが出来た。それでも質屋の子供かなんぞのような顔をつくろってはいった。質屋の丁稚は、
「野瀬はんとこがすばしこい商売をやらはんので、わての方は上ったりですわ。わてらは流して貰わな商売にならへんのに、あんたとこが流れをくい止めはんねん。まるで堤みたいや」とこんなことを早熟た口で言った。なお、
「あんたところはぼろいことしはって、良家やのに、坊ん坊んがこんな使いせんでもよろしおまっしゃろ」
豹一はむっと腹を立てた。ただ、丁稚が主に安二郎の悪口を言ってみるのだという理由で、僅に食って掛るのを思い止った。