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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

線上閱讀久生 十蘭《顎十郎捕物帳(あごじゅうろうとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,435 字 · 27 頁

青空文庫

鯨一頭しとめれば七浦七崎にぎおうの譬え。心を鬼にして船をば急がせますならば、母なる鯨は舷に添い、己が身の危うさも忘れどこまでもどこまでもついて来る。そのうちに船は港に入り、よもやと思うて見かえるなれば母なる鯨はもう半狂乱。漁船とともに腹を砂浜にのしあげ、子を返して賜わらぬならば、いっそひと思いにこの身も殺してくれといわんばかり、折よく通りかかりました当小屋の六兵衛どの、哀れと思い買いとりて母子もろとも江戸へ連れかえり、かくはご高覧に供しまする次第。まずは右のため口上。東西。……いよいよこれより鯨の潮ふき、母鯨が添乳のさま、つぶさにご覧に入れますところなれど、しょせん田舎生れの鯨ゆえ、江戸の繁華に胆をつぶし、ただもうぐったりしているばかり。それはまた改めてお越しの日にゆずり、ご座興までに鯨のひと声、鯨と言えば、あいよ、と答える。さあ太夫さん、しっかりお頼み申しますよ」

と、扇子で鯨の頭を突きながら、

「……鯨ちゃんや」

と、声をかけると、よっぽど遠いところで、あいよ、と答える。

口上つかいが静々と鯨の背中からおりて行くと、さっき言ったように鯨節の総踊り。