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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

線上閱讀久生 十蘭《顎十郎捕物帳(あごじゅうろうとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,984 字 · 28 頁

青空文庫

「なにしろ、いま申しあげたような意気地なしですから、あまり人づきあいもなく、吉兵衛のほうで恨みを買うようなことはなかったようです。……裏どなりを克明に訊きこんで歩きますと、この半年というものはまるっきり家にひっこんでいて、たまに外へ出ると、菩提寺へ出かけて行って墓の草むしりばかりしている。それが楽しみだというンだから、よッぽど変った奴にちがいないンです」

裸の膝っ小僧へにぎりっ拳をおいて、

「ときに、お見こみはいかがです。やはり……」

ひょろ松は、むずかしい顔をして、

「そんなことがわかるもんか。吉兵衛の口だけできめてかかれるもンじゃねえ。強がって与太っぱちを言ったのかも知れねえからの」

「でも、入墨の痕が……」

「それだって、その棒手振がなにをどう感違いしたのかわかったもんじゃねえ。あわてると仕損じる。まアまア手がたくゆくこッた」

と言いながら、帷子の襟をしめ、

「じゃ、ひとつとっくり焼跡を見ることにしようか。念を押すまでもねえが、昨夜のままになっているンだろうな」

「そのご念にはおよびません。非常止めにして、火消人足さえ入れないことにしてあります」

「京屋の間取りはわかっているか」