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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
線上閱讀久生 十蘭《顎十郎捕物帳(あごじゅうろうとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,783 字 · 22 頁
両国の請地へ見世物に出すなら後見ぐらいはいたします」
「まあ、そうおこるな。……そうしておめえがむくれている図なんざ、藪蚊が立ちぐらみをしたようで、あまり見られた態じゃない。……からかっている訳じゃねえ、しんじつのはなしだ。洒落やじょうだんで、このおれが釣りになんぞくる訳がない。おれの釣りたいものに手をかしてもらいたいと思って、それでおまえをここまでおびき出したんだ。どうだ、ひょろ松、片棒をかついではくれまいかの」
ひょろ松は、真顔になって、
「へい、おはなしの模様では、どのようなお手伝いもいたしますが。……それで、あなたが釣りたいとおっしゃる、その、めあての魚は」
「海にはいねえ魚だ」
「そりゃアむずかしい御注文」
「鎌いたちだ」
えッ、と息を引いて、
「阿古十郎さん、あなた……」
渚の下手を、顎でしゃくって、
「鎌いたちは、あそこで泳いでいる」
殺手
年の頃は三十五六歳、険高な、蒼味がかった面の、唇ばかり毒々しく赤い、異相というのではないが、なんともいい表しがたい凄惨な色が流れていて、なにか人を慴伏させるような気合がある。
膝きりの布子を着、足首まで水に這入って静かに糸を垂れている。