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ふうぞくじひょう
風俗時評
豊島 与志雄
線上閱讀豊島 与志雄《風俗時評(ふうぞくじひょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,275 字 · 23 頁
禁酒の必要はないが、晩酌の禁止は必要である。健康上から云っても、毎晩一定量の酒を飲むことよりも、一週に一回ほど徹底的に飲酒する方が、まだ無害であり、殊に精神的にはそうである。
この晩酌を助長するようなものが、ラジオの演芸放送に果してあるのであろうか。罪は勿論、晩酌をする本人にあるであろうし、或はラジオの聞き方にあるであろう。だが、演芸と云えば、恐らく日本演芸のことであろうし、日本演芸には、酒の座席にふさわしい情緒、或は生活逃避的な気分が、伝統的にあった。昔は、歌舞伎芝居も飲食しながら見物されたものであるし、講釈も昼席で枕をかりて寝転びながら聴かれたものである。所謂国粋的演芸ばかりでなく、現代の流行小唄が如何なるものであるかは、人の知る通りである。
現代の苦渋な生活に、慰安や娯楽は固より必要である。また、殊に現時の事変下の生活に、晩酌は断じて不用である。この間の矛盾を解決するものは、恐らく将来の科学的テレヴィジョンでもあろうか。ラジオの放送当事者も聴取者も、一考すべきであろう。
J
日本人には含羞的性質が多分にあると云われている。世間体とか人前とか体面とかいう事柄に対する関心は、その現われであろう。