輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

こうちがえり

高知がえり

寺田 寅彦

線上閱讀寺田 寅彦《高知がえり(こうちがえり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 3,148 字 · 7 頁

青空文庫

何者だろう。黒紋付をちらと見たら蔦の紋であった。宿の二階から毎日見下ろして御なじみの蚕種検査の先生達は舳の方の炊事場の横へ陣どって大将らしき鬚の白いのが法帖様のものを広げて一行と話している。やっと出帆したのが十二時半頃。甲板はどうも風が寒い。艫の処を見ると定さんが旗竿へもたれて浜の方を見ながら口笛を吹いているからそこへいって話しかける。第二中学の模様など聞いているうち船員が出帆旗を下ろしに来た。杣らしき男が艫へ大きな鋸や何かを置いたので窮屈だ。山々の草枯れの色は実に美しいと東の山ばかり見ているうちはや神島まで来て、久礼はと見たけれども何処とも見当がつかぬ。釣船が追々に沖から帆を上げて帰って来る。甲板を下駄で蹴りながら、昨日稽古した「エコー」と云うのを歌う。室へ入ろうとするといつの間にか商人体の男二人その連れらしき娘一人室へいっぱいになって『風俗画報』か何か見ているので、また甲板をあちこち。機関長室からハイカラ先生の鼠色のズボンが片足出て、鏡に女の顔が映って見える。煙突の脇へ子供を負った婆さんとおばさんとが欄干にもたれて立って、伝馬の船底から山を見ている顔が淋しそうな。