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まぞう

魔像

林 不忘

線上閱讀林 不忘《魔像(まぞう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 131,494 字 · 260 頁

青空文庫

造酒は、傍らの愛刀、阪東二郎幸村の鍛って野分の称ある逸剣を取って、ニヤニヤ笑いながら、「金打しよう」

「うむ。盟約の証じゃ」

行燈の下、山城守と造酒、打! 打! と鍔元を鳴らして、微笑を交した。園絵をさらってこの神保造酒に与えるという大仕事――その役割りがまたしてもどうやら長庵へ行きそうで、どうもこのところ、村井長庵ばかに忙しくなりそうだが、話も大いにこんぐらがって来て、作者も楽でない。それはいいが――。

ふたりがぼそぼそ話し合っている部屋のそとの縁に、ソッと立ち聴きしている女のすがたがあった。

市松お六といって、深川の羽織上り、神保造酒の妻とも妾ともつかず、この道場を切り廻している大姐御なのだ。

姐御とは言ったが、それは本性のこと、町道場でも武士の家にいるのだから、髪なんかもちゃんと取り上げて、それらしく割りに堅気な、しかし飽くまで艶な拵え。

いま、園絵を褒美にやろう、貰おうの約束が出来たのを聞くと、嫉妬であろう、耳をそばだてていたお六の顔に、歪んだ笑いがうかんで、何ごとか心に、ひとりうなずいている様子。

と、その時、道場のほうから廊下を曲って、大勢のあし音が近づいてくるから、そんなところに立っているのを見つけられては面白くない。