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まぞう

魔像

林 不忘

線上閱讀林 不忘《魔像(まぞう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 131,494 字 · 260 頁

青空文庫

もっとも、壁辰のほうは、ふだんから白眼み一方で、あんまり愛嬌のある笑いなんか持ち合わせていない。色の黒いやつが笑ったんだから、まるで炭団が転んで崩れたよう――喬之助の焉然に対して、壁辰のは――さア、何というのか。

ま、そんなことは余計だ。

「や! おいでなせえ。生憎家をあけて――長くお待ちになったかね」

親分らしく、ゆったりして、壁辰が言った。

「いえ。あっしも、ただいま上りましたばかりで、ちょいと親方にお眼にかかって、お頼みしてえことがありやして、へえ」

どこで覚えたか、喬之助は、もう言葉つきまですっかり職人になりきっている。有名な左官の名人、壁辰親分のまえだ。こちとらのような駈出しは、口を利くせえかっちけねえ――という意で、心得たもの、固くなって恐縮している。

「ああ、そうかい」と、壁辰もすまして、「よく来なすった。何の用か知らねえが、ま、ゆっくり聞くとしよう――ちょっくら待って下せえ」

山雨は横にそれた。のんびりした応対である。台風一過、喬之助はしずかに頭を下げた。壁辰も、ニコニコしてそこの茶の間の前を通り、台所へ這入ったのだが! するすると背後手に境いの板戸を閉め切ると同時に、壁辰、顔いろを変えて、あわて出した。