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なるとひちょう

鳴門秘帖

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 56,957 字 · 114 頁

青空文庫

いいも終らぬ時だった。

真上の細道から、血まみれになった山番の下士が二人、バラバラと転び落ちに下りてきた。三位卿の音声学もばかにはできない。啓之助は横顔を打たれたように、

「何事だッ」と、怒鳴った。

「おッ、お目付」

「ウム、いかが致した?」

「い、一大事です……」と息をかすらせたが、すぐ要領をいった。

「また、あの乱暴者が狂乱して、牢番の佐平の脇差を奪って斬り殺しました」

「えっ、斬った?」

と、おうむ返しにせきこむ啓之助の言葉尻を取って、三位卿は得意らしく、

「ム、斬ったろう!」と大きくうなずいた。

「で、どうした、彼奴は?」

「佐平の声に驚いて、吾々が駈けつけてみた時は、もう柵を破っている切迫で」

「ヤ、脱牢したか!」

「すわとばかり、組みつきましたなれど、なにせい、血刀を持っている上に、いつものような死物狂い、とても、二人の敵ではなく、みるまにあの柵際から西谷へ向って、身を躍らせてしまいました」

「ば、ばか!」と森啓之助、口ぎたなく呶喝して、

「破牢して西谷へ飛び下りたのを見届けながら、空しく逃げ降りてくる奴があるか。合図鳴子は何のために備えてあると思うのじゃ。