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おうがいのおもいで

鴎外の思い出

小金井 喜美子

線上閱讀小金井 喜美子《鴎外の思い出(おうがいのおもいで)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 127,675 字 · 254 頁

青空文庫

ついぞそうした物は見かけませんでしたから。

忙しかったでしょうに、よく手紙を下さいました。こちらからも度々出したものでした。「独逸日記」というのに、「家書到る」ということが、月に二、三回はきっと見えます。それが滞独中ずっと続いています。日記もよく附けていられました。

その頃千住に佐藤応渠という人がいられたのに、お兄様は詩を見ておもらいになって、親しくなさいました。学者としてあがめられても、もともと漢方のお医者でしたから、時代後れで、質素なお暮しでした。私が稽古に通った関澄桂子さんともお附合なのです。その佐藤翁が新年に私へ下すったお手紙があります。

新禧万祝、御歌いとをかしく、御出精のほど見えはべれ。加筆返上、其後御兄さまより御便りはありしや、いかゞ。あらば御聞せ下され。

其まゝに千代の鏡と氷るなり

結びあまりし今朝の薄氷

大きみの千世の例と老がつむ

心の根芹もえやしつらん

など、思ひ候まゝかいつけ上候。桂の君にもよろしく御伝ねぎ上候。かしく。

おきみさま御もとへ元萇

別紙憚ながら御とゞけねぎ上候。

元萇は翁の本名です。別紙というのは桂子さんへのお便でした。