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おうがいのおもいで

鴎外の思い出

小金井 喜美子

線上閱讀小金井 喜美子《鴎外の思い出(おうがいのおもいで)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 127,675 字 · 254 頁

青空文庫

」

知っていたというのではなく、何でも手当り次第に見るのですから、ふっとそれを思出したのです。

「これはお祖父様の御本だったのだよ。」

「では大切にしましょうね。」

大切にはしましたけれど、面白いとは思いません。こんな本もあると、机の上の本たての飾のつもりでいました。

次に見せて下すったのは『宇津保物語』でした。これは絵入で、幾冊もあって、厚い表紙は銀泥とでもいいますか、すっかり手摺れて、模様もはっきりしません。一冊の紙数は幾らもないのでした。仮名書の本は読みつけていましたから苦になりません。家に古くからあった草双紙のどこを開けても絵があって、その絵の廻りに本文がびっしり仮名で埋めてあるのを、今頃の子供たちが新聞でも見るように読みつけていましたから。

見せて下さる本の中には、ひどく古くて、表紙や裏表紙も破れていて、中は歌の題にふさわしい歌の言葉をいくつも並べて、さもさも続けて御覧なさいというように見えるのもありました。

「これは何という御本です」と伺ったら、「題などはどうでもいいよ。古本屋がおまけにくれたのだから」と、お兄様は笑っていられました。

清輔の『袋草紙』