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おうがいのおもいで
鴎外の思い出
小金井 喜美子
線上閱讀小金井 喜美子《鴎外の思い出(おうがいのおもいで)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 127,675 字 · 254 頁
と教えられたのです。
こんな話を聴かされますと、私も何だかそれが気に入って、飽かず見詰めるのでした。
狭い床でしたけれど、そこには時々変った幅が懸けられます。奥原晴湖の密画の懸けてあったこともあります。晴湖は明治の初めに東京に出て、下谷に住んで、南画の名手として知られた女の画家でした。佐藤応渠の半切もありました。
むかしたが思ひつくまの神まつり
よきに似よとの教なるべし
かぐ山の岩戸の桜匂ふなり
神世人の世隔てざるらむ
おかるゝは命ならずやとられつゝ
時にあふぎの危かりけり
(扇)
かような歌を覚えています。家へ来て沢山書かれたのでした。
野之口隆正、福羽美静などもあったのは、同郷の先輩のためでしたろう。福羽氏のは仮表具で、私が伺った時に書いて下すったままでした。
話が外れましたが、右の海屋の幅は割に長い間掛かっていました。
「これは茶掛によかろうと思うが」と、或る時お兄様がいわれます。
「お兄様も、お茶をお始めになりますの。」
「いや、石黒氏がお茶をなさると聞いたから、あげようかと思って。」
石黒忠悳氏はその頃の長官でした。