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きりん
麒麟
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《麒麟(きりん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 9,040 字 · 18 頁
」
すると老人は、から/\と笑って、
「わしの楽しみとするものは、世間の人が皆持って居て、却って憂として居る。幼い時に行を勤めず、長じて時を競わず、老いて妻子もなく、漸く死期が近づいて居る。それだから此のように楽しんで居る。」
「人は皆長寿を望み、死を悲しんで居るのに、先生はどうして、死を楽しむ事が出来ますか。」
と、子貢は重ねて訊いた。
「死と生とは、一度往って一度反るのじゃ。此処で死ぬのは、彼処で生れるのじゃ。わしは、生を求めて齷齪するのは惑じゃと云う事を知って居る。今死ぬるも昔生れたのと変りはないと思うて居る。」
老人は斯く答えて、また歌を唄い出した。子貢には言葉の意味が解らなかったが、戻って来て其れを師に告げると、
「なか/\話せる老人であるが、然し其れはまだ道を得て、到り盡さぬ者と見える。」
と、孔子が云った。
それからまた幾日も/\、長い旅を続けて、箕水の流を渉った。夫子が戴く緇布の冠は埃にまびれ、狐の裘は雨風に色褪せた。
「魯の国から孔丘と云う聖人が来た。彼の人は暴虐な私達の君や妃に、幸な教と賢い政とを授けてくれるであろう。」
衛の国の都に入ると、巷の人々はこう云って一行の車を指した。