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たそがれ

黄昏

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《黄昏(たそがれ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 14,500 字 · 29 頁

青空文庫

「この間、行った時にね、こんど来る時は是非連れて来いって云うんでしょ。今月は、少し余分にお金がいったから、姉さんなお喧(やかま)しいんだわ」

「……阿母さんだって行きたいところなら、もう疾(と)うに行っているさ。行けば何の彼のと五月蠅(うるさ)いし……」

「だって、東京へ来て、もう半年にもなるのに、一遍も行かないのはひどくってよ。――今夜は駄目? どうせいつかは行かなけれゃあならないんだから。お暇が貰えたら今日来て下さいよね?」

「お暇の貰えないことはないだろうが……」

母の、行きたくもあり、行きたくもなしという素振(そぶり)を見ると、のぶ子は、充分自分の勝味を感じて熱心に勧め始めた。姉が、どんなに母の不沙汰を良人の手前片身せまく感じているか、一遍母が来て、自分のために口を利いてさえくれれば、同じ出して貰う金も、どんなに快よく貰えるかということなどを、のぶ子は、狭い家の中で、主夫婦に聞えないように、小さく、而も心をこめて話すのである。

のぶ子の寄宿している学校は市ケ谷の方に在った。そこからはるばる下谷まで出かけて来、また麹町まで行こうとする心持を思い遣ると、おくめは、そぞろに可哀そうになって来た。