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よみから

黄泉から

久生 十蘭

線上閱讀久生 十蘭《黄泉から(よみから)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,167 字 · 21 頁

青空文庫

ピアノの上にしらじらしく立っている葡萄酒の瓶や、生気のない皿のキャナッペをながめながら、光太郎はじぶんの虫のよさに思わず苦笑した。

ルダンさんのところはどうだろうと思って露台に出てみると、食堂の窓からあかあかと電燈の光が洩れ、もう宴会がはじまったのだとみえ、ルダンさんが上機嫌なときに奏くまずいピアノがきこえていた。

光太郎のうちはもと銀座の一丁目にあって、おけいの家は新堀にあった。

おけいは父の五十五の齢に産れたはじめての女の子だったが、上の三人はみな早く死んでいたので、そのよろこびかたといったらなく、一家中気がちがうのではないかと思われたほどだった。

そのころ堀川はまだまださかんなもので、派手堀川といわれた先代がまだ生きていて、福井楼へ百人も人を招んでさかんな帯夜の祝いをした。芸者の数だけでもたいへんなものだ。その夜の料理は一人前四百円についたというので評判だった。

たぶんおけいが六歳ぐらいのことだった。光太郎が堀川へ遊びに行っているとおけいの父の新造が、きょうおけいとお月見をしますが、あなたもと誘った。

おけいのお守りに芸者が七人、橋光亭から船をだして綾瀬まで漕ぎのぼると、おけいの父が用意してきた銀の総箔の扇を山ほどだして、さあ、みなでこれを放っておくれといった。