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ディーざかのさつじんじけん
D坂の殺人事件
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《D坂の殺人事件(ディーざかのさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,072 字 · 44 頁
最後に死人の身体にある多くの生傷について刑事の質問があった。主人は非常に躊躇して居ったが、やっと自分がつけたのだと答えた。ところが、その理由については、くどく訊ねられたにも拘らず、余り明白な答は与えなかった。併し、彼はその夜ずっと夜店を出していたことが分っているのだから、仮令それが虐待の傷痕だったとしても、殺害の疑いはかからぬ筈だ。刑事もそう思ったのか、深く穿鑿しなかった。
そうして、その夜の取調べは一先ず終った。私達は住所姓名などを書留められ、明智は指紋をとられて、帰途についたのは、もう一時を過ぎていた。
若し警察の捜索に手抜かりがなく、又証人達も嘘を云わなかったとすれば、これは実に不可解な事件であった。しかも、後で分った所によると、翌日から引続いて行われた、小林刑事のあらゆる取調べも何の甲斐もなくて、事件は発生の当夜のまま少しだって発展しなかったのだ。証人達は凡て信頼するに足る人々だった。十一軒の長屋の住人にも疑うべき所はなかった。被害者の国許も取調べられたけれど、これ亦、何の変った事もない。少くとも、小林刑事――彼は先にも云った通り、名探偵と噂されている人だ――が、全力を尽して捜索した限りでは、この事件は全然不可解と結論する外はなかった。