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ディーざかのさつじんじけん

D坂の殺人事件

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《D坂の殺人事件(ディーざかのさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,072 字 · 44 頁

青空文庫

併し、着物が膝の上の方までまくれて、股がむき出しになっている位で、別に抵抗した様子はない。首の所は、よくは分らぬが、どうやら、絞められた痕が紫色になっているらしい。

表の大通りには往来が絶えない。声高に話し合って、カラカラと日和下駄を引きずって行くのや、酒に酔って流行唄をどなって行くのや、至極天下泰平なことだ。そして、障子一重の家の中には、一人の女が惨殺されて横わっている。何という皮肉だ。私は妙にセンティメンタルになって、呆然と佇んでいた。

「すぐ来る相ですよ」

明智が息を切って帰って来た。

「あ、そう」

私は何だか口を利くのも大儀になっていた。二人は長い間、一言も云わないで顔を見合せていた。

間もなく、一人の正服の警官が背広の男と連立ってやって来た。正服の方は、後で知ったのだが、K警察署の司法主任で、もう一人は、その顔つきや持物でも分る様に、同じ署に属する警察医だった。私達は司法主任に、最初からの事情を大略説明した。そして、私はこう附加えた。

「この明智君がカフェへ入って来た時、偶然時計を見たのですが、丁度八時半頃でしたから、この障子の格子が閉ったのは、恐らく八時頃だったと思います。