輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
あるふゆのばんのこと
ある冬の晩のこと
小川 未明
線上閱讀小川 未明《ある冬の晩のこと(あるふゆのばんのこと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。
N3 · 進階 · 新字新假名 · 4,140 字 · 9 頁
女は、そろそろ帰るしたくにとりかかったのです。そして、軽い財布を握って、つくづくと悲しくなりました。
「私は目が見えないのです。だから、ほかにする仕事も見つかりません。こうして、未熟な三味線を弾いて、人さまに聞かして、いくらかなりとお金をもらおうと思うのでありますが、だれも、見返るものがない。考えれば、それがほんとうなのかもしれません。しかし、私は、この世の中の情けある人さまの救いにすがらなければ、この身でどうして暮らしてゆくことができましょう……。」と、見えない目で空を仰ぎながら、訴えたのでした。寒い風に吹かれながら、彼女は、とぼとぼと暗い道を、三味線を抱えて帰ってゆきました。町の中は、だいぶ静まってしまった。このとき、道の傍から、小さな足音がして、少女が走り出ました。
「おばさん、おばさん。」といって、彼女を呼び止めるのでした。彼女は、いろいろのことを頭の中に考えていたが、その声を聞きつけると、自分を呼んでいるのだなと思って、立ち止まったのであります。
「どなたですか。」と、彼女は見えない目をその方に向けました。少女の声には、聞き覚えがなかったのでありました。