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いのちのしょや
いのちの初夜
北条 民雄
線上閱讀北条 民雄《いのちの初夜(いのちのしょや)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 31,366 字 · 63 頁
「あの人の咽喉には穴が空いているのですよ。その穴から呼吸をしているのです。喉頭癩と言いますか、あそこへ穴を空けて、それでもう五年も生き伸びているのです」
尾田はじっと眺めるのみだった。男はしばらく題目を唱えていたが、やがてそれをやめると、二つ三つその穴で吐息をするらしかったが、ぐったりと全身の力を抜いて、
「ああ、ああ、なんとかして死ねんものかいなあー」
すっかり嗄れた声でこの世の人とは思われず、それだけにまた真に迫る力がこもっていた。男は二十分ほども静かに坐っていたが、また以前のように横になった。
「尾田さん、あなたは、あの人たちを人間だと思いますか」
佐柄木は静かに、だがひどく重大なものを含めた声で言った。尾田は佐柄木の意が解しかねて、黙って考えた。
「ね尾田さん。あの人たちは、もう人間じゃあないんですよ」
尾田はますます佐柄木の心が解らず彼の貌を眺めると、
「人間じゃありません。尾田さん、決して人間じゃありません」
佐柄木の思想の中核に近づいたためか、幾分の昂奮すらも浮かべて言うのだった。
「人間ではありませんよ。生命です。生命そのもの、いのちそのものなんです。