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おせん

おせん

邦枝 完二

線上閱讀邦枝 完二《おせん》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 74,074 字 · 148 頁

青空文庫

あいつの首を引換にしたって、借りられる金じゃァねえぜ。冗談も休み休みいってくんねえ」

「ふん、知らねえッてもなァおッかねえや。おいらァ現にたった今、この二つの眼で、睨んで来たばかりなんだ。山吹色で二十五枚、滅多に見られるかさじゃァねえて」

「ふふふふ、金の字。その話をもうちっと委しく聞かせねえか」

そういいながら、柘榴口から、にゅッと首を出したのは、絵師の春重だった。

「春重さん、お前さんいたのかい」

「いたから顔を出したんだがの。大分話が面白そうじゃねえか」

春重は、もう一度ニヤリと笑った。

四

「ふふふふ、金の字、なんで急に唖のように黙り込んじゃったんだ。話して聞かせねえな。どうせおめえの腹が痛む訳でもあるめえしよ」

柘榴口から流しへ出て来た春重の様子には、いつも通りの、妙な粘りッ気が絡みついていて、傘屋の金蔵の心持を、ぞッとする程暗くさせずにはおかなかった。

「てえした面白え話でもねえからよ」

「なに面白くねえことがあるもんか。二十五両といやァ、おいらのような貧乏人は、まごまごすると、生涯お目にゃぶら下がれない大金だぜ。そいつをいかさまだかさかさまだかにつるさげて、物にしたと聞いちゃァ、志道軒の講釈じゃねえが、嘘にも先を聞かねえじゃいられねえからの。