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おくみさんとそのしゅうい
お久美さんと其の周囲
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《お久美さんと其の周囲(おくみさんとそのしゅうい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 75,369 字 · 149 頁
自分等の内幕の苦しさを幾分誇張してまで話して聞かせる様な事さえもあった。
けれ共恭は何処までもお関を飲んで掛って居た。
お関が自分に対して持って居て呉れる好意を利用しない程自分は気の廻らない人間ではない等と思って居たので十九の時家を飛び出してから此の方彼処此処と働いて歩いた家々の中では一番住みよくもあり勝手の利く落付き場所であった。
お関は恭に対しては実に静かな心持で接して居たのだけれ共、或る日フト恭が小女にからかってさも面白そうに並びの好い歯をチラチラさせて笑い興じて居るのを見ると、又今まで眠って居た種々の気持が徐々と目ざめて来たのであった。
「恭は男だ。
此の言葉は非常に複雑した気持をお関に起させた。
「恭は男である。
お関の目前には今までとまるで異った恭吉と云う二十三の男が若くて達者で見よい姿を以て現われて来たのである。
お関は恭の前に近づくすべての女と云う女に対して自分は非常に堅固な防材とならなければならないさし迫った必要を感じたので、洗場へ行く者は只一人自分のみを選び「若い女」と云うお久美さんへ多大の注意を向けて居た。
恭は如何にもちゃんとして居る。