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おさかなじょし

お魚女史

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《お魚女史(おさかなじょし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 9,457 字 · 19 頁

青空文庫

女史は二十六だそうだ。弁吉がカブトをぬいだのは尤もで、こんなとゝのった美貌が地上にいくつと有るものじゃない。色の白さ、リンカクの正しさとあざやかなこと、彫刻と申すほかに仕方がない。着物もたしなみのある着附で、品がよく、うつむきがちに沈黙していると、いかにも、ゆかしく、つゝしみ深く見えるのである。そのくせ、いったん、口をひらくと、ガラリと一変して、頓狂で、騒々しい。

弁吉は、海のねエお魚みたいに喋るんだよ、と云ったが、ナルホドねエ、魚が喋ったら、やっぱりガラリと一変して、頓狂で、騒々しくなるのかも知れない。

お魚女史は猛獣の正体が判らないから、はじめは澄していたが、まもなくお酒が廻って、私が馬脚を現したから、安心して、喋りはじめた。

「私はねエ、ご近所へ引越してきたんですのよ。防空壕なんですのよ。それでもチャンと屋根があって、上下左右コンクリートで厚くぬりかためてあるでしょう。陸軍中佐のウチでしょう、セメントぐらい自由だったんでしょう、四畳半以上もあるでしょう、いゝものよう。遊びにいらしてネエ。私、オメカケなんですよウ。今は、その方がいゝわねえ。旦那は六十三なのよウ。